東日本大震災の津波で74名の児童の命が奪われた、石巻市立大川小学校の津波被災国賠訴訟について、最高裁判所第一小法廷は、2019年10月10日付けで5名の裁判官の全員一致をもって、宮城県及び石巻市の上告を棄却し、上告受理申立ての不受理を決定しました(最高裁の決定正本は「こちら」)。これによって、宮城県と石巻市に対し損害賠償を命じた仙台高裁の控訴審判決(2018年4月26日言渡)が確定することになりました。
この訴訟は、仙台弁護士会の吉岡和弘弁護士とともに、当事務所の齋藤雅弘弁護士が訴訟代理人として携わってきました。 控訴審判決は、2011年3月11日14時46分に発生した東日本太平洋沖地震(M9)の発生後に大川小学校への津波襲来が予見可能だったか否かは問題にせず、宮城県防災会議の報告書等によって同地震の発生前から想定されていた宮城県沖地震(M8クラス)によって引き起こされる津波の襲来の予見可能性を肯定し、小学校の設置・運営に関わる石巻市教育委員会や大川学校(校長・教頭等)には、学校保健安全法に基づき平時から児童の安全を確保すべき義務が課されており、この義務に基づき事前に避難マニュアルや避難場所の整備等を行っていれば、児童が津波の犠牲になることはなかったとして、学校防災における教育委員会や学校等の組織的過失を認定し、国家賠償法に基づき石巻市と宮城県の損害賠償責任を肯定しました。今般の最高裁決定は、このような控訴審判決の判断(内容は「こちら」を参照ください)を、そのまま是認したものであり、学校防災の上で重要でとても意義のある決定です。 この最高裁決定により、控訴審判決が示した平時における学校組織における職務上の義務の内容や責任判断の基準は、全国の学校においても、災害対応に関する平時からの組織的な対応についての基準を示したものであることが明確になりました。今後、この裁判の中で示された組織のあり方や対応の基準が、全国の学校防災に十分に生かされることを切に願います。 これまで、長年にわたり、たくさんの皆様から、大川小学校の津波被災国賠訴訟をご支援して頂きました。この訴訟の確定にあたり、皆様から頂いたご支援に深く感謝を申し上げます。ありがとうございました。 コメントの受け付けは終了しました。
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